霧多布湿原(きりたっぷしつげん)は北海道厚岸郡浜中町にある湿原。面積は3,168haで、釧路湿原、サロベツ原野に次いで国内3番目です。
春(6月)から秋(9月)まで、さまざまな花が順番に咲いて湿原を彩るため、花の湿原とも呼ばれています。
湿原中心部の泥炭で形成された高層湿原部分 803haが、1922年(大正11年)10月12日に国の天然記念物「霧多布泥炭形成植物群落」に指定されました。
(保全を目的として指定当時より周辺国有地86haが追加されている。)
また1993年6月10日にラムサール条約にも登録(範囲は2,504ha)されています。
湿原の環境保護のため地元の有志を発起人とした霧多布湿原トラストが作られ、湿原を保全し後世に残すよう活動を行っています。
位置
北海道の東部、釧路と根室のほぼ中間の太平洋岸にあります。
南西から北東に延びる海岸線に沿って長さ約9km、奥行き約3kmに広がります。
「霧多布」はアイヌ語(キイタップ)の当て字であるが、実際北海道東部太平洋沿岸に特徴的な海霧の影響を受け、霧の多い土地であります。
湿原南部の琵琶瀬地区には漁港があり近海の魚介の水揚げや昆布漁を行っています。
本来の霧多布の集落は湿原から霧多布大橋を渡った島にあり、浜中町役場や温泉施設もここにあります。
霧多布岬(島の東端)の沖にある小島(無人島)は、絶滅危惧種エトピリカの生息地であります。
湿原の中心を横断する道(一般道道琵琶瀬茶内停車場線)は湿原保存のため道の下を水が通る構造になっています。
この道はMGロード(Marshy Grassland Road)の愛称が付けられ、歩道が整備され、各所に見晴らし場所や記念碑が設けられています。
西側の高台には琵琶瀬展望台、北側の丘の上には霧多布湿原センターがあります。
この霧多布湿原センターでは湿原についてわかりやすく解説されており、ここからは双眼鏡などでタンチョウを観察できます。
花の湿原
花の湿原と呼ばれるのは釧路湿原などに比べて花の種類が多く花の密度が高いためです。
春から秋にかけ多様な花が湿原のあちこちに咲くことで有名です。
特に初夏を告げる白いワタスゲ、夏の訪れと共に咲く黄色いエゾカンゾウなどは湿原一面を彩る。
夏には数組のタンチョウが繁殖を行っており、ツル以外にもさまざまな鳥類が観察できます。
湿原を彩る花を季節順に記。
ミズバショウ、白(6月)
クロユリ、濃紫(6月)
ワタスゲ、白い綿毛は実(6〜7月)
ヒメオウギアヤメ、青紫(7月)
エゾカンゾウ、黄色(7月)
ノハナショウブ、赤紫(7月)
エゾリンドウ、青(9月)
湿原内は立ち入り禁止であるが、観察のための木道や展望台が設けられています。
夏の海岸沿いは真紅のハマナスが咲きます。